直撃雷と誘導雷

一般的に雷害は「直撃雷」によるものと「誘導雷」によるものに大別されます。

1.直撃雷

(1)概要

直撃雷は、主に雷雲(入道雲、積乱雲など)と大地「地上の高構造物(鉄塔や高層ビル、樹木など)」との間で発生する雷放電です。直撃雷は落雷とも呼ばれます。

(2)直撃雷による被害

直撃雷による被害には火災をはじめ、我々の生活に脅威となる被害が多く発生します。
例えば次のような被害が考えられます。

  • 避雷針が無い構造物が直撃雷を受けると、構造物が破損することがあります。(例:数年前に国会議事堂が落雷を受けて上部コンクリートが破損した)
  • 直撃雷による大きな電流が構造物の鉄筋などの金属導体を流れた場合、経路によっては大きな電磁力が発生します。この影響で構造物が破損することがあります。

(3)直撃雷の対策

直撃雷の被害リスクを低減するためには、雷電流を安全に大地へと導く外部LPS(Lightning Protection System)が重要となります。外部LPSは受雷部システム(避雷針、水平導体、メッシュ導体)、引下げ導体導線システム、接地極システムで構成される避雷設備です。雷は大気の絶縁を破壊して放電する現象ですので、それ自体の発生を抑制することは不可能ですが、雷電流を安全に大地へ逃がすことによって、雷害を大きく減少させることができます。

2.誘導雷

(1)概要

誘導雷は、落雷によって発生した電磁界の急変による影響で金属線路に誘導される雷サージ(異常電圧および異常電流)です。

(2)誘導雷による被害

誘導雷による主な被害は、金属線路に接続している電気・電子機器の誤動作および故障です。被害を受けやすい機器としては次のようなものが挙げられます。

  • 電源線と接地線が接続されている機器(給湯器、洗濯機、電子レンジなど)
  • 電源線と通信・信号線が接続されている機器(PC、テレビ、レコーダ、Wi-Fiアクセスポイントなど)

これらの機器は電源線と接地線または通信・信号線によって、雷サージの入口と出口が形成されるため機器が雷サージの通り道となり、被害を受けやすい傾向があります。

実際には機器内部の部品が損傷することがほとんどで、雷害だと気が付かない場合もあります。例えば、ある日突然に電話器が使えなくなった、帰宅してみたらPCが動かないなどが発生した場合は雷害を受けた可能性があります。

また、高層マンションが隣接しているような場合、近所のマンションへの落雷によって、別棟のマンション内のパソコンや電話、給湯器が故障した例もあります。

(3)誘導雷対策

誘導雷の被害リスクを低減するためにはSPDまたは耐雷トランスの設置が有効です。
これらを機器の近傍(金属線路上)に設置することで機器に侵入する雷サージを抑制し、機器を誘導雷から保護することができます。

<関連リンク>