なぜ雷対策が必要か

雷の影響(雷サージの影響)

雷による機器への影響は、直撃雷を受けた建物内部だけに発生するわけではありません。雷は短時間に莫大な電流が流れるために、大きな電磁界が発生します。この電磁界が、金属線路に雷サージを誘導します。この雷サージが、金属線路に接続された機器まで伝搬し、機器に影響を及ぼします。落雷点から数km先に被害が及ぶこともあります。雷サージは落雷時はもちろんのこと、雲内放電でも発生します。

直撃雷や誘導雷の発生イメージ図
図1:落雷による直撃雷と誘導雷

 

雷サージによる被害

機器の雷被害の多くは、上記の雷サージによって発生しています。下記はその被害の一例です。

  • パソコンをはじめとする電子機器の故障(オフィスのパソコンや複合機が使用できなくなった)
  • 給湯器や洗濯機、テレビなどの家電製品(雷雨後に動かなくなった)
  • 防犯カメラの故障(雷雨が発生した後に動かなくなった)
  • セキュリティシステムの故障(雷雨後、カードキーでドアの開閉ができなくなったり、火災報知器が故障した)
  • 立体駐車場のシステム故障(雷雨後に動かなくなった)
  • 電話、構内交換機の故障(雷雨後、不通になった)
  • wifiのアクセスポイント、ルータ等ネットワーク機器(雷雨後にネットワークがつながらなくなった。)

このように、雷サージは私たちにとって身近な機器や設備を故障させる原因となっています。

雷の侵入経路

近年の高度情報化とこれに伴うネットワーク化によって、雷害が増大しています。これは、ネットワーク化によって、雷の入口と出口が形成されたことによります。これまで雷害とは無縁であった機器もその対象となりました。一方高度情報化社会を支えているIT機器には多くの半導体デバイスが使用され小型化・高密度実装されているため、雷などの異常電圧に対しては脆弱となっています。これらの電子機器に影響を及ぼす雷の侵入経路は電源線路、ネットワーク・通信回線、接地線、空間(電磁波)等が考えられます。

雷の侵入経路
図2:雷の侵入経路

 

機器の耐圧破壊

雷による被害は、ほとんどが耐圧破壊による電流の流入によるものです。

機器は、通常耐圧を持っており、一定の電圧までは耐えることができます。機器が耐えられる範囲内でのサージ電圧の侵入では、機器は誤動作をする可能性はありますが、致命的に故障することは考えにくいです。
雷の発生によって機器が耐えられる耐圧の壁をはるかに超えた異常電圧が侵入してきた際には、機器の内部で絶縁破壊を起こして機器が故障します。誘導雷の場合には、単一機器が故障するだけで済む場合もありますが、直近雷や直撃雷の場合には被害が広範囲に及びます。接地に接続されていない機器でも侵入してくる雷サージによって機器の内部が耐電圧破壊を起こして故障することがあります。

現代社会は雷サージの脅威にさらされている

雷サージは金属線路のある場所ならどこにでも発生する可能性があります。家庭やオフィスを見渡しても、ほとんどの機器は何かしらの線につながれていることでしょう。電源線、電話線、同軸ケーブルやLANケーブル。こうした線から雷サージが侵入し、機器内部を破壊するのです。

パソコンなどの情報機器は、省電力化によって駆動電圧が低くなり、その影響で機器の耐電圧も低くなりました。そのため、雷サージによる異常電圧には弱いという側面があります。とくに、ネットワーク機器は電源線と通信線が雷サージの入口・出口を形成するため、雷サージの侵入を受けやすい傾向があります。

雷被害の原因たる雷サージの発生は防げませんが、侵入してきた雷サージはSPDによって低い電圧に抑制すること(機器内部が絶縁破壊を起こさない電圧に低減すること)が可能です。機器内部に大きな雷サージが侵入することを阻止することができれば、被害は減らせます。また、避雷針などの外部LPSを設置して安全に雷電流を接地へと導くとともに接地抵抗を低減して大地電位上昇を抑えることによって被害の波及も抑制することが可能です。IoTをはじめ、ネットワーク化によって我々の生活は便利になっていく一方で、これらに用いられる機器は、駆動電圧も低いことなどから雷などの異常電圧に対して脆弱です。だから、機器内部への雷サージの侵入を阻止することが大切なのです。