部分放電測定について

部分放電測定と絶縁劣化診断の関係

原理などの学問的な内容の不足や厳密的な用語の使用ではない部分はありますが、部分放電と絶縁劣化の概念を記載します。

絶縁体の劣化が進行していき、まず微小な範囲で絶縁不良に至ると、その部分に電荷が集中し、小さな放電が発生します。(地絡まで至っていない放電)

この現象は『部分放電(Partial Discharge、PD)』と呼ばれており、高圧電気設備の様々な場所および媒体で発生します。

絶縁材の不良箇所、欠陥箇所、空洞箇所をボイドと表現することがあり、その部分で放電が起きることからボイド放電と表現することもあります。

 

部分放電現象が現れ始める初期状態においては、環境や負荷状態、放電によって引き起こされた絶縁体の変質によって、部分放電が発生したり、止まったり、不安定な状態になります。

放電現象が繰り返されるにつれ、絶縁不良の箇所・範囲が徐々に拡大していき、部分放電の強度や頻度が増加していきます。

つまり、部分放電現象の進行は絶縁劣化の進行と相関があるということとなり、部分放電現象を把握することで、絶縁材料の不良あるいは絶縁破壊の兆候を捉えることができます。

 

部分放電測定で絶縁劣化診断を行うことのメリット

部分放電測定は、高圧電気設備の絶縁劣化状態を検査する手法のひとつですが、次のようなメリットがあり、広く一般的に採用されています。

  • 設備が通常運転している状態で部分放電を測定するため、電力供給や生産を停止する必要がありません。※
  • 非破壊で(分解をせずに)設備内部や絶縁体の劣化状態を診断することができます。
  • 部分放電によって発生し、接地線や空間を伝播してくる信号を捉える手法であるため、様々な高電圧設備・機器の絶縁劣化診断を行うことができます。

※変圧器やブッシングなどの場合、希望されるセンサーによっては一度運転を停止しなければならないケースもあります。

部分放電測定時のノイズについて

部分放電に起因する電気物理量を検出するために、一般的に、接地線にHFCT(高周波変流器)を取り付けたり、設備表面にTEV(Transient Earth Voltage、過渡接地電圧)センサー(電磁波センサー)を取り付けます。

一方で、接地線や空間を伝播してくるものは、部分放電によって発生したものだけではなく、「設備から発生する定周期的なノイズ」や「空間を飛んでいる無線通信」、「絶縁体の劣化に関連のないコロナ放電などの他の放電現象からの信号」などが含まれ、これらは絶縁劣化診断に対するノイズになってしまいます。

つまり、測定した値が何に由来するものなのか切り分けができないと、良し悪しを判断することができません。

そのため、部分放電測定では、必要ないこれらのノイズを取り除くことが重要になります。

HFCT(高周波変流器)

TEVセンサー(電磁波センサー)